①5日目【そして、井上さんとの別れ】栄タクシー~17番札所井戸寺

2018/5/15の遍路日記

目次

17番札所「井戸寺」

この日は朝早く起床。
井上さんと同時に起きる。
フランス人カップルはまだ寝ている。

カップルを起こさないように静かに、
荷物をまとめ、簡単な食事をとる。

僕の朝ご飯はこれ

昨日、杖を忘れて戻ったお寺で出会ったおじさんにもらったやつ。
食事を終えて、今日の遍路をスタートする。

カップルには別れの挨拶ができなかったけど、
どこかでまた会うだろう。
目指す目的地は同じなのだから。

ここから17番札所井戸寺(いどじ)までは、
2キロくらいだったかな。
30分くらい歩けばつく。
とりあえず、
17番札所まで井上さんと一緒に歩く。

その先は時に何も決めていない。

井戸寺に到着したのは6時半ころ。

納経所は7時にならないと開かない。
境内のベンチでまっていると、
一台のワゴン車からご夫婦が下りてきた。

「おはようございます」

そういって話しかける。
ご夫婦は九州から来ているとのこと。
月に一度くらいこうして四国を車で回っているのだそうだ。

フェリーを使えば四国はすぐだといっていた。
なるほど、たしかに。

納経所が開いたのに気づいた僕たちは、
お別れのあいさつをした。
自分のお勤めを終える。

あ、犬いた。

遍路犬だ。
お願いして写真を撮らせてもらった。

このワンコも88ヶ所目指しているらしい。

そういえば、後々気づいたんだけど、
四国ではやけに犬にほえられた。
カートを引く音のせいなのか、
あるいは番犬として誰にでも吠えるのか、
原因はわからなかったけど。

ワンコとお互いの健闘を称え、
飼い主のお姉さんにも挨拶をして別れる。

井上さんとの気づかぬ別れ

ふと先を見ると、
井上さんが誰かに声をかけられている。

なんか、地元のおばちゃんが、
井上さんに、この先のおすすめの道を
教えているらしい。

「ああ、そうですか、でもいいです」

井上さんはあっさり断る。

僕はすかさず二人に寄って行って、
おばちゃんの話を引き受ける。

「この先の行き方ですか?」

そう聞く僕におばちゃんは丁寧に教えてくれた。

この先は行き方が二つあるが、
峠のほうを超えていったほうがいいとのこと。

少し時間も短いし、
そっちのほうが昔からの道だという。

ちなみにその、おばちゃんが教えてくれたほうの道は、
国道192号のほうではなく、
地蔵院を経由していく道である。

遍路の地図を見ればすぐわかると思います。
正直ぼくは、荷物も重たいので、
峠道は避けたかった。

でも、これもご縁とそちらを選択することにした。

話をしている僕たちの間に、
井上さんが声をかける

「じゃあ先行ってるね、この先でまた会うでしょ!」

「そうですね、またあとで会いましょう!」

そういって、井上さんは先に進む。

しかし結局、この後会うことはなかった。
まだちゃんとお礼も言ってないのに。

ー。

井戸寺での素敵なご縁~峠道を目指す

おばちゃんとの会話に戻り、
道をしっかり教えてもらい、
厚くお礼を言う。

おばちゃんが言う。

「そうだ、いいものあるんだけどいる? ちょっとここで待ってて」

そう言っておばちゃんは数メートル先の自分の車に戻り、何かをとってきた。

「これ、こないだ高野山が開かれてから千二百年の記念の年があったでしょ。あの時ね、関係するお寺さんとか有志のメンバーで、お札をみんなで交互に背負いながら、遍路道をつなぐっていう行事をやってね、その時の貴重なお札なの。もしよかったらこれいる?」

「えー、それってものすごく貴重なお札じゃないですか! そんな大切なものいただいていいんですか!!??」

「うん、もしね、だれかお遍路さんにあったら分けてあげられるように、数枚余分にいただいていたの。だからもしよかったらもらって。そして、お遍路頑張ってね!」

「ええー、すごい嬉しいです!こんな貴重なお札じゃ、納経帳より貴重です!もう家宝にします!」

とても貴重なものをいただいた。

「あとこれ、70番の札所のお寺さんの本堂が建て替えになる時にね、その昔の本堂の木から作ったお守りなの。これもよかったらもっていって。」

その木片のお守りはいまでもしっかり持っている。

「本当にありがとうございます。初めてお会いした遍路にこんな貴重なものをくださるなんて…」

「そうだっ!」

といって、また車に何かを取りに戻る。

「これもよかったら飲んで」

そう言って栄養ドリンクをくれた。

通りすがりの遍路に
こんなに良くしてくれたおばちゃんは、
地元の人だという。

こうしてたまにこのお寺にきては、
お遍路さんと話すんだそうだ。

井戸寺でこのおばちゃんに会えたら、
本当に運がいいと思う。

いただいた栄養ドリンクは、
あとで井上さんに再会したときに一緒に飲もう。

なにせ、井上さんがいなければ、
このおばちゃんと出会えてなかったかもしれないのだから。

でも、チャンスをつかめるかどうかは本当に、
人によるというか、
心を開いている人にしかやってこないんだなとつくづく感じた。

井上さんは、冷たいわけじゃなくて、
ただ、自分で決めた道があったから断っただけだ。

井上さんのような気さくな男性はなかなかいない。
だけど、こんな貴重なお札を得られる機会を逃した。
ご縁の力を感じざるを得なかった。

厚く厚くお礼をいい、
おばちゃんと別れ、
納経を済ませ、
17番を後にする。

「井上さんにこの話したらもったいながるかな~、あとで栄養ドリンクわたそっ」

―。

でも、もう会うことはなかった。

後記

遍路の40日間、
本当にたくさんの人に出会った。

なかには、井上さんのように、
心からまた会いたいと思う人も何人かいた。

自分もそんな風に誰かに、
「また会いたい」と思ってもらえる存在に、
なれているのだろうか。

そんなことを考えさせられた。

ー。

そういえば、井上さん、
今度は寒さの厳しい時をあえて選んで
遍路にチャレンジするって言っていたな。
今頃四国を歩いているかもしれない。
多分もう会うことはないけど、
楽しい一日をありがとう。

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