お釈迦様と仏像の物語~お寺巡りがもっと楽しくなる話

お釈迦様のお母さん、 摩耶夫人はお釈迦様が生まれてから7日目に亡くなりました。
しかしそれでも、お釈迦様は生涯、お母さんを懐かしがって慕っていたと言われます。

そんなお釈迦様は、 悟りを開かれてから、
お母様はどうしているかと心配されて、天眼通をもって見てみると、
忉利天(とうりてん)という天上界に生まれていました。
この忉利天というのは天国ではありません。
まだまだ下の世界です。

お釈迦様は お母様に説法をして救うために忉利天に向かいました。

その時、お釈迦様がいなくなった天竺(インド)では、
光を失ったようにみんなが落胆しました。

この時、誰よりも気を落としたのが優填(うてん)大王でした。
そのあまりの悲しみで、神経を病んでしまいました。

それを見た毘首羯磨(びしゅかつま)という美術の神様が
「そんなに 悲しむことはない。 お釈迦様もやがて帰ってくるだろう。しかし、 寂しいだろうから、 私がお釈迦様にそっくりな像を彫ってあげようじゃないか」
といって慰めます。

この時できたのが、お釈迦様の等身大の姿の仏像です。
この仏像は、お釈迦様36歳の時の 像です。

やがてお釈迦様は、お母さんへの説法を終えて 帰ってきます。
そのことを知った天竺では、王や大臣、市民などあらゆる階級の人たちが集まり
お釈迦様を出迎えます。

しかし、不思議なことに、
出向いているたくさんの人の真ん中に、
すでにお釈迦様がいるのです。

みんなが「おや、お釈迦様はいつお帰りになったんだろうか?」
と思いよく見ると、それは、祇園精舎に祀ってあった木の仏像でした。

そうこうしていると、本物のお釈迦様が忉利天から 帰ってきました。
そして、木像のお釈迦様と 本物のお釈迦様が お互いに挨拶をしています。

それを見てみんなが驚いていると、
木像のお釈迦様はこう言います。


「 私はあなたが留守の間の仏です。今、本当の仏が帰ってきたのですから、 私はこれで失礼させて頂きます」

これに対して 本物のお釈迦様が言います。


「 実は私よりもあなたの方が 大きな役目を持っている。 私は80になったらこの世界を離れるが、その後もこの世界は迷いの人たちで溢れているだろう。その衆生を助ける役目があなたにはある。80年の私の使命より、未来永劫に人々から拝まれ続けるあなたの役目は大きいのだ。だから、あなたがご本尊になりなさい」

そういって、お釈迦様は仏像の頭をなでて摩頂灌頂(まちょうかんじょう)を行い、魂を入れました。

※※※

私たちが参拝に行くお寺にはどこでも仏像が祀られています。
それらも、全てはこのようなお釈迦様の思いがあって祀られているものです。

私たちが仏像を前にする時、
形式ばかり手を合わせておすがりするのではなく、
どのような仏様であっても、
お釈迦様ご本人に対面するという気持ちを持って向かい合いたいですね。

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